経済産業省が、本年9月15日に「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表しました。
中身は、下請に関する法律、運用基準、通達の改正です。
日本の産業は、業種によりますが、重層構造になっており、中小企業の多くは下請け企業です。このような重層構造は、太平洋戦争中の軍部による産業の統制の名残でもあるそうです。
このため、下請企業を保護するために、法律が定められており、主なものは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)、下請中小企業振興法、建設業法などです。また、下請法の運用基準、振興法の振興基準、その他通達が定められており、今回の発表は、これらの基準、通達が改正するというものです。
下請法においては、規制の対象となる取引が決められており、すべての取引が対象となるわけではありません。主に、重層構造になることが多い取引が規制対象で、製造業(自動車など)、修理、情報成果物制作(放送、ゲームソフト、アニメーション)、役務提供(貨物、運送など)です。建設業の下請け企業の保護は、建設業法で定められているので、下請法の範疇ではありません。
今回の改正ですが、目的は、当然下請企業の保護ですが、元請企業が、利益を社内に留保してしまって、下請企業にその恩恵が行きわたらないと、結局給与が上がらず、景気が良くならないことにもあると思われます。なので、景気対策の側面もあると思います。「未来志向型の取引慣⾏に向けて」の3つの基本方針の一つにも「賃上げできる環境の整備」と書かれています。
(追記)
今回の改正ですが、下請法や下請中小企業振興法などの法律の改正というより、下請法の運用基準(公正取引委員会の通達)、振興法の振興基準(経産省の告示)の改正であり、目途も年内になっています。省庁の告示・通達で、法律でないので、国会を通す必要がなく、省庁のレベルで、手続き的に簡易に改正できるため、年内という早目の改正が可能のようです。
法律の改正となると、国会の開会の期限もあり、他の審議事項が優先されて継続審議などなって、年内改正はとても無理だと思われます。
Comments