top of page

​相続・遺言 >> 遺言書作成

遺言書作成/相続・遺言

POINT   遺言書作成の3つの方法

【質問】遺言書の書き方を教えてください?


 

【回答】

遺言書は、民法に書いている一定のルールに従って作成されなければ無効となります。
遺言書には、公正証書遺言自筆証書遺言秘密証書遺言の3つがあります。それぞれ、民法に一定のルールがあり、そのルールにのっとっていないと無効になります。

  1. 公正証書遺言(民法969条)
    公証役場に赴き、公証人に遺言を作ってもらいます。
    公証人という遺言書作成のプロが作るので、民法の一定のルールにのっとっていることはほぼ間違いなく、一番安心できる方法です。特に事情がない限り、この方法をお勧めします。
    大まかなルールとしては





    というものです。通常、公証役場には、事前に足を運んで、公証人と打ち合わせをします。
    その際、以下の書類が必要です。
    ・遺言者と相続人との関係と相続人の現在の氏がわかる戸籍謄本
    ・不動産の登記簿謄本と固定資産評価証明
    ・不動産以外の場合には、それらを記載したメモ

    福岡市内だと、中央区舞鶴に福岡公証役場、博多駅前に博多公証役場があり、説明書も置いてあるので、参考にできると思います。
    また、遺産の金額に応じて、公証役場に手数料を支払う必要がありますが、それほど多額ではありません。

  2. 自筆証書遺言(民法968条)
    遺言者が、遺言書の全文、日付、氏名を自署し、印鑑を押して作成します。自筆でない部分があると無効になります。
    自筆証書遺言の保管者または発見者、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所に行って検認してもらい、調書を作成してもらわないといけません(民法1004条1項)。この調書のコピーを添付した自筆証書遺言でないと、法務局で登記を受け付けてもらえません。
    これは事後的に書換などを防ぐための措置です。従って、自筆証書遺言の保管者、発見者は、速やかに検認手続を行えば、その後他の相続人との間で争いが生じた時に、遺言書の偽造などといったあらぬ疑いをかけられる恐れは減ります。ただし、検認手続は、あくまで相続人がなくなった時点での遺言書の内容を確認するにとどまり、その遺言書が亡くなられた方の真意に基づき書かれたものか(そもそも最初から偽造されたのではないか)までは確認するわけではありません。
    また、封をしてある自筆証書遺言は、家庭裁判所において相続人立会いの下でないと開封できません(民法1004条3項)

  3. 秘密証書遺言(民法970条)
    秘密証書遺言とは、遺言書の中身がわからないようにしておくためのもので、遺言書を入れた封書に封印をして、公証役場に持って行き、秘密証書遺言として一定の手続きをしてもらいます。検認、開封の規定は、秘密証書遺言にも適用があります。

証人二人以上の立会
遺言者が遺言の内容を公証人に口で伝える
公証人が、遺言の内容を筆記し、これを遺言者及び承認に読み聞かせ、又は閲覧させる

POINT   遺産分割方法の指定と特定遺贈

【質問】 私の父には、妻(私の母)と子供二人(私と姉)がおりました。
             父は公正証書遺言を作成しており、土地Aは妻(私の母)に相続させる、土地Bは私に相続させる、

             土地Cは姉の夫に譲る、と書いてありました。それぞれの違いを教えてください。

【回答】

遺言書の法的意味については、大きく言うと、

遺産分割方法の指定特定遺贈相続分の指定包括遺贈の4つがあります。
 上記の事例は、遺産分割方法の指定または特定遺贈に当たります。

 

1.遺産分割方法の指定(民法908条)
本来の相続人に、遺産のうちの特定のものを指定して、「相続させる」と書いた場合、遺産分割方法の指定(民法908条)にあたります。
遺産分割方法の指定」により遺産をもらえる人は本来の相続人に限ります。

遺産をもらう人が本来の相続人でない場合は、「遺贈」になります。

(逆に、本来の相続人が遺贈により遺産をもらう場合はあり得ます。)
よって、上記事例で言えば、父の妻である母と私は、本来の相続人なので、土地Aと土地Bは「遺産分割方法の指定」により遺産をもらったことになります。


最高裁平成3年4月19日により「相続させる」と書いてある遺言は「遺産分割方法の指定」であり「遺贈」ではない、とされました(この最高裁判決は裁判官の名を取って香川判決と呼ばれます。)
この最高裁は「『遺産分割方法の指定』の場合は、何らの行為を要せずして被相続人の死亡時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される。」としたため、不動産は相続受益者(父の妻である母、私)の単独申請で所有権移転できます(この判決が出る以前から、法務局は、遺産を譲り受けたものが単独で登記することを認めていましたが、これに反対する裁判例も多数ありました。)。
預貯金も(本来は)相続受益者単独の手続きで名義書き換えされるはずですが、下級審は判断が分かれているようです。
私が遺言執行者としてかかわった事例においては、預金、証券口座とも、遺産を譲り受けた相続人のみで(他の相続人の印鑑などはないまま)名義書き換えができました。
つまり、「遺産分割方法の指定」は、相続という法律(民法896)による(意思表示によらない)権利移転ということです。
このように、「遺産分割方法の指定」による財産の譲り受けは、もらった人は単独で登記などができますが、他の相続人との話し合いをして、遺言書とは違ったわけ方もすることは可能です。

2.特定遺贈(民法964条)
遺贈とは、遺言により無償で、自らの財産を与えることです。
与える相手(遺産をもらう人)は相続人であっても、相続人以外の第三者であっても構いません。
遺贈には、包括遺贈特定遺贈があり、

 包括遺贈は、例えばどの遺産かを特定せずに「全財産の3分の1を〇〇に遺贈する」というものです。

 特定遺贈とはどの遺産かを特定して「~の財産を〇〇に遺贈する。」というものです。
この質問の事例は、特定遺贈に当たります。
先ほど書きました通り「遺産分割方法の指定」で遺産をもらえるのは、本来の相続人だけです。姉の夫は、本来の相続人ではないので、土地Cは、「遺産分割方法の指定」ではなく「特定遺贈」により遺産をもらったことになります。
特定遺贈により遺産をもらった場合、遺言執行者、または、共同相続人の共同行為により、不動産の所有権移転登記や預貯金の名義書き換えをします。つまり、姉の夫は単独では所有権移転登記ができません。
概念的には、意思表示(単独行為)による権利移転です。
被相続人(遺言者である父)の承継人である他の相続人(父の妻である母、姉、私)が遺贈(単独行為)をしたものの地位を承継し、それらの者または、それらの者の代理人(民1015)の協力がないと、所有権移転、預貯金の名義書き換えなどの手続きができません。

相続人は「被相続人が受遺者に対して権利移転手続きをする義務」を被相続人から承継します。

相続.png

POINT   相続分の指定と包括遺贈

【質問】 遺言書を書くとき、譲渡す財産の特定をしないで、どの相続人がどの程度の遺産を引き継ぐか

    と言った割合だけを決めるやり方もあると聞きました、教えてください。


【回答】

もともと相続人である人に、遺言書により割合だけを決めて財産を譲り渡す場合があり、これを相続分の指定、と言います。
また、相続人でない人に対して、遺言書により割合を決めて(遺産の全部としてもよい)遺産を譲り渡す方法もあり、これを包括遺贈といいます。
一部を相続人に、一部を相続人以外の人に譲るといった相続分の指定包括遺贈を組み合わせることもできます。

  1. 相続分の指定(民法902条)

    遺産の内容を特定せず、「遺産の〇分の○は、~の相続分とする」というふうに遺言書を書くやり方です。この場合、財産の内容を特定していませんので、どのように分けるかは、相続人間で話し合いをすることになります。
    しかし、遺産の全部を特定の一人の相続人に分けたい場合「遺産の全部を~の相続分とする。」という書き方をする場合もあります。
    相続分の指定は、もともと共同相続人だった人に対して行うものです。

     

  2. 包括遺贈

    遺贈には、包括遺贈特定遺贈があります。
    包括遺贈は、どの遺産かを特定せずに、割合だけを遺言書に記載します。
    包括遺贈には、

     全部包括遺贈
        (=単独包括遺贈、「全財産を〇〇に遺贈する。」というもの)

     一部包括遺贈
        (=割合的包括遺贈、「全財産の3分の1を〇〇に遺贈する」
         「全財産を次の割合で遺贈する。〇〇に2分の1、△△に2分の1」というもの)

    があります。
    これに対して、特定遺贈とは(不動産ならどの不動産化など)特定の遺産を指定して「~の財産を〇〇に遺贈する」と言った書き方をするものです。
    包括遺贈は、もともとは相続人でないものに対して財産を譲りたい時に行います。
     

  3. 包括遺贈を受けたものの権利、義務

    包括遺贈を受けたもの(包括受遺者)は相続人と同一の権利・義務を有します。
    遺産は相続人や他の包括受遺者との共有となり、債務も承継します。
    従って、放棄や承認ができ、その手続きは相続放棄、証人と同じです。

     

  4. 相続分の指定と包括遺贈の違い

    1. 包括受遺者に遺留分がないので、特定受遺者が自分が遺贈を受けた割合を超えた遺産を受け取っていても、異議は言えません。

    2. 代襲相続はありません。つまり、本来の相続人であれば、そのものがなくなっていれば、そのものの子供が相続人として遺産を引き継ぐ権利を有しますが、包括受遺者がなくなった場合、そのものの子供は遺産を引き継ぐ権利を持ちません。

    3. 法人でも包括受遺者になれます。
      つまり、会社に対して、どの遺産かを特定せずに割合だけを決めて、遺産を譲る、といったことができます。

bottom of page